校長ブログ36
校長ブログ071014 「もう悪口をいうのはやめよう」
先日の全校朝会で、星野富弘さんの話をしました。
「(絵を見せて)これは、星野富弘さんの詩です。星野さんは、小さなころから、体を動かすことが大好きで、群馬大学を卒業して、群馬県の中学校の体育の先生になりました。ところが、マットで宙返りをしていたとき、頭から落ちてしまいました。失敗の一つと思ったのですが、どうしても起き上がることができなかった。首の骨が折れていたのです。
首の骨を折ると死んでしまうか、一生動けなくなるかです。星野さんも、病院で何度も生と死の間をさまよいました。お医者さんや看護師さんの懸命の治療で、命は助かりましたが首から下は動かなくなりました。
夢だった体育の先生になったばかりのことでした。それからの星野さんは、人が変わったようでした。幸せな人を見れば、にくらしくなり、眠れないときは、むりやりお母さんを起こし、熱が出れば大騒ぎをして、先生や看護婦さんを集めたそうです。そのころの星野さんの口癖は「ちきしょう」でした。「ちきしょう」は、人をうらむ言葉ですね。
ある日、同じ病院に入院していた中学生が、東京の大きな病院に行くことになりました。病院のみんなで、寄せ書きを送ることになりました。みんなが、サインペンで「がんばれ!」と励ましの言葉を書いていきます。星野さんの番に来ました。ペンを口にくわえましたが、点を打つのが精一杯でした。それでも、その中学生は、その点をとても喜んでくれたのです。
星野さんは、それから猛烈に字を書く練習をします。ペンに巻き付けたガーゼは、唾液でぐっしょりぬれ、歯ぐきから血が出るほど食いしばって、額に汗をにじませて書きました。練習していけば、いつかきっと、美しい字が書けると…。
そうして何年もたち、星野さんが書いた文字や絵が、すばらしい詩になって本になりました。大勢の人が、星野さんの詩集に感動しました。先生もその一人です。去年の春、星野さんは78歳でお亡くなりになりました。今でも、星野さんのふるさとにある美術館には、たくさんの人が訪れて、ノートに「ありがとう」と書いているそうです。今日は、この詩を紹介します。
『鏡に映る顔を見ながら思った もう悪口をいうのはやめよう 私の口から出たことばを いちばん近くで聞くのは 私の耳なのだから』(くちなし)
自分の思い通りにいかないとき、むしゃくしゃして、「ちきしょう」と思う気持ちは分かります。それでも、誰かのせいにして、悪口を言うのはやめよう、それを言う自分のことをどう思う、ということを星野さんは、教えてくれていると思います。もし、そんな気持ちになったときは、悪口を言わないで、先生や親に相談してみましょう。きっと道は開けますから。みなさんには、自分を大切にして、幸せな人生を歩いてほしいです。この本は、図書室においておきますね。」




